高揚感を超えて: カンナビノイドエディブルの効果の背景にあるメカニズムとは
目次
はじめに
矢野経済研究所の情報によると、日本におけるCBDの市場規模は2025年には829億円にまで成長すると予測されています。CBDがここまで多くの人に知られることになったのは、ネットやSNSの発達によって国内外の情報が容易に得られるようになったことと、多くの人がCBDという成分にアクセス出来るようになったこと、また、CBDの汎用性の高さなどに起因しているようです。
汎用性という点ではCBDの消費方法は多岐に渡ります。ティンクチャーやチンキ、オイルと呼ばれる液体を舌下に留めて効果を得る舌下摂取という方法、ベイピングと呼ばれる蒸気化して肺から摂取する吸入摂取方法、クリームやボディーローションのように肌に塗って効果を得る経皮摂取方法などその経路は様々です。
これら多様な摂取経路の中で、経口摂取をするためにグミや飴などにCBDを含むカンナビノイドが混ぜられた商品をエディブルと呼びます。
Edible:エディブルという言葉の意味
「エディブル」と聞くと、一般的にはカンナビノイドが含まれたカラフルなグミや、カラースプレーがあしらわれたチョコレート、キラキラと七色に輝く棒付きキャンディーなどを想像します。これらの商品は写真を見るだに、口の中に唾液が溢れてくるほど美味しそうな見た目をしていることから、「エディブル」という言葉に「美味しそうな食べ物」という意味を持つと思っている人も少なからずいるのではないでしょうか。
しかし、ケンブリッジ辞書によるとEdible:エディブルとは「食用」という意味で紹介されており、その食べることが出来るというニュアンスにはどちらかというと「(美味しい、美味しくないにかかわらず)食べるに適している」、「(味の保証はできないが)食べても大丈夫だ」、「食べても命に別条はない」といった意味が込められています。つまり、エディブルという言葉そのものからは「美味しそう」というイメージは連想できないのです。とはいえ、カンナビノイドエディブルはどれも美味しそうにプロモーションされており、製造者もエンドユーザーにあえて不味いものを提供することはないでしょう。
ではこのエディブルにはどのような利点があるか、という点についてですが、エディブルの利点を説明する上で非常に重要な「バイオアベイラビリティ」について先に説明します。
バイオアベイラビリティとは
バイオアベイラビリティとは日本語で「生物学的利用率」と呼ばれ、摂取した成分が生物にどの程度の割合で作用するかを表す指標です。たとえば、CBDが含まれるグミを食べた場合、そのグミに含まれるCBDが100%体に取り込まれるかというとそうではなく、摂取経路により大きく異なるのです。大麻に含まれるTHCのバイオアベイラビリティについて調べた研究によると、ベイプのように吸入して肺の毛細血管からその成分を取り込む場合と、口から食べて胃で消化され、肝臓で代謝される場合とではその成分を体内に取り込める量が異なると言われています。
吸入摂取の場合、その割合は10~35%、経口摂取の場合は4~12%、つまりベイプとして吸い込んだ方が、口から食べるよりも遥かに多くの成分を体内に取り込めるのです。そう考えると、口から食べるエディブルはあまり効率がよくないと思われがちなのですが、実はある点においてベイプのように吸入摂取をするよりも経口摂取をした方が圧倒的に良い利点があります。
エディブルを経口摂取するメリットとは
経口摂取と吸入摂取を比べた時に圧倒的に経口摂取の方が優れている点、それは摂取した物質の効果の時間です。効果時間の差は代謝経路の違いによって生じています。
その違いを大麻に含まれるTHCを例にとってご説明すると、吸入摂取の場合、THCは肺の毛細血管から血流に乗り脳に達します。その効果は摂取後数秒から数分であらわれ、完全に効果があらわれるのは30分以内、それから平均約6時間程度効果が持続します。一方で経口摂取の場合、THCは胃で消化された後に肝臓から血流に乗り、脳に達します。その効果は摂取後約30分〜2時間以内であらわれ、完全に効果があらわれるのは4時間以内、それから平均12時間は効果が持続します。
このようにエディブルを口から摂取する場合は長時間その効果を感じることが出来るため、Vapeやジョイントのように何度も煙を吸い込む必要が無く、喉への刺激や吸引の手間などは一切かからないところが経口摂取の最大の利点であると言えます。
結論
CBDを含むカンナビノイドの摂取方法は様々ですが、中でもエディブルのようなカンナビノイドが含まれる食べ物を摂取する場合、ベイプとして吸引をするより体内に成分を取り込める量が少ない反面、長時間にわたってその効果を発揮するという利点があります。しかし、個人の限界値を超えるほど強力な精神的、肉体的効果を持つエディブルを口から取り込み、一度成分が体内のシステムに作用してしまうと過去に経験の無いほど強力な効果が長時間続くことになり、その圧倒的な状態に耐えきれずに救急搬送されるケースも多発しています。
そのため、エディブルの良い側面を享受するためには、効果のあらわれ方や効果時間をきちんと理解した上で、適量を知るべく少量から試し、少しずつ追加していく、ということが最も重要なのです。
参考
株式会社 矢野経済研究所 | CBD製品市場に関する調査を実施(2022年)
Cambridge Dictionary | Edible
Iain J McGilveray |. Pharmacokinetics of cannabinoids | Pain Res Manag. 2005 Autumn:10 Suppl A:15A-22A
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