インディカ・サティバという分類は必要?大麻の品種と特徴、違いを徹底解説
目次
大麻の品種による違いとは
これからインディカとサティバ、ハイブリッドなどの違いについてのお話をしていきますが、実は全ての大麻植物はサティバであるということをご存知でしょうか。大麻植物の正式名称は「カンナビス・サティバ・L」と言い、日本の大麻取締法、第1章総則の第一条にも以下のようにはっきりと明記されています。
“この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。”
この名称の中のLとは、スイスの植物学者であるカール・リンネ(Carl Linnaeus)から付けられており、1953年に向精神作用のある植物をカンナビス・サティバと特定したことに由来します。そしてサティバから派生したTHC含有量の高い大麻草がインディカであると考えられていますが、この大まかな分類法は十分ではないという声が高まってきているのです。このインディカサティバ議論は植物の命名法に起因しており、昨今、国外の大麻合法化に伴い、大麻が与える経済的なインパクトの大きさから、「きちんとした法則に従って大麻植物を分類して命名するべきだ」という意見が多くなったという経緯です。
一般的にサティバはTHCの含有量が少なく、インディカには多く含まれていると考えられていますが、厳密にはより強い精神作用を持たせるためにTHCの含有量を高めて「人為的にサティバ種から作られた変種がインディカである」と言われています。サティバ種はTHCの含有量が低く、インディカ種はTHCの含有量が高い、そのためサティバは軽くインディカは重い効果なのだという認識が広まったのです。
日本では違法の大麻草には実に様々な種類があります。2015年の研究によると娯楽用大麻の種類は700種類以上あると言われています。OG Kush(オージークッシュ)やCereal Milk(シリアルミルク)、Black Cherry Soda(ブラックチェリーソーダ)など、品種の名前は非常にユニークで魅力的なものばかりですが、香りに基づいたものもあれば血統に基づいたものもあるように、名付けにおいてある種のルールはあるものの、ほとんどの名前はこのルールに則っていません。様々なカンナビノイドを取り扱う私達から見ると、大麻品種の名前から想像出来る情報は風味や産地、または親株の種類などで、品種が持つ詳しい効果などを想像することは困難です。(中には9lb Hammer/9ポンドハンマーなど強力な効果を思わせる名付けもありますが)
一般的に、サティバ種はクリエイティブな作業や楽しい会話などに向いており、日中の使用が推奨され、インディカ種の大麻はリラックスや睡眠などに適しているため夜中の使用が勧められています。しかしここで問題になるのは品種の名前が持つイメージと、インディカ・サティバという大まかな分類分けに科学的な根拠が無いということです。医療大麻を必要としている人々が持つ症状は、慢性疼痛やガン治療による吐き気、アルツハイマー病から緑内障、HIVに至るまで様々であり、これらの症状を抱える人が大麻を何らかの治療目的で摂取する事を考えたらこの大雑把な2分類が十分でない事は理解できます。
そこで、この記事ではサティバ、インディカという分類分けが品種の効果を測るのには不十分である具体的な根拠と、なぜこのような分類分けがされるようになったのか、またそれぞれの違いや、近年、医療大麻業界で注目されてきている理想的な分類方法について段階的に歴史を紐解きながらご説明していきます。この記事を読んでいただけると、インディカ、サティバという概念や最新の分類法まで全て理解できるようになります。
まずはじめに、インディカ、サティバという分類分けに影響を及ぼすカンナビノイドについて見てみましょう。
カンナビノイドの種類と効能
大麻には100種類を超えるカンナビノイドが発見されており、中でも最も有名なカンナビノイドはテトラハイドロカンナビノール(THC)です。その他重要な天然カンナビノイドには、カンナビジオール(CBD)、カンナビノール(CBN)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビシクロール(CBL)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)などが挙げられます。これらのカンナビノイドは天然の大麻草やヘンプ植物に含まれているものです。
THC/Tetrahydrocannabinol(テトラハイドロカンナビノール)
THCには実は様々な種類があり、最も有名な成分はΔ9THCです。Δ9THCには強い精神活性作用があり、これが大麻によって引き起こされる効果のメインとなる成分です。このほかにもΔ8THC、Δ7THC、Δ10THC、exo-THCなどが挙げられ、これらはΔ9THCの異性体と呼ばれています。中でもΔ8THCは、Δ9THCよりもゆったりとした弱い効果があることで知られており、近年アメリカでは色々な商品に様々な濃度で配合され、市場に流通しています。しかし2022年のジャーナルを見るととΔ8THCはCBDに強酸を加えることで生成可能で、その過程において有毒な副産物を生成し、最終製品になる前にこれら有害な成分が除去されていないことがあるため、Δ8THCによる健康被害の報告が増えてきていると言います。アメリカは大麻合法国とはいえ全ての州でΔ9THCが認められているわけではありません。つまり、Δ9THCが禁止されている州のマーケットに流通しているのがΔ8THCであり、商用目的で人工的に生成されているケースが多い事が推測できます。なお、Δ9THCを含むいくつかの製品は慢性疼痛、制吐剤、睡眠などに効果があるとされています。
CBD/Cannabidiol(カンナビジオール)
CBDは科学的根拠が確立されているわけではないものの、認容性の高さから世界中で人の健康に寄与すると考えられて使用されています。CBDは国内でも合法的な成分で、ベイプリキッドやグミ、バームなど様々なものに含まれて販売されています。唯一医薬品と認められた製剤以外はあくまでもサプリメントとしての立ち位置であり、その効果効能に関してははっきりとしていませんが、今後長期使用の影響などの臨床試験が増えることで実態が明らかになるでしょう。国内のCBDユーザーの投稿などを見ると「CBDバームで皮膚の炎症を伴うかゆみが軽減された」、「CBDオイルはよく眠れる」などのポジティブな声も増えてきています。一般的にCBDは不安や疼痛、依存症の軽減に役立つと考えられ、THCによる強い精神作用をおさえることに役立つ可能性があることも示されています。
CBN/ Cannabinol(カンナビノール)
CBNはTHCに熱、酸、紫外線が加わることで生成されるため、THCの劣化成分とも呼ばれます。基となる成分はTHCですがCBNが持つ精神作用はTHCよりも遥かに低く、気分や思考、行動などに影響を与えないため、多くの文献ではCBNは非精神活性作用成分であると言われています。一方でTHCと同時に摂取することで鎮静効果が高まり、眠たくなると報告する人が多いことも事実です。これは古い大麻草を吸引(CBNの量が劣化によって高まったもの)した多くの人が眠気を感じたという逸話に起因しており、海外でCBNはSleepy Cannabinoid(スリーピーカンナビノイド)と呼ばれ、睡眠に効果があると考えられています。また、体内に微量のTHCが残留している場合CBNを摂取すると体内のTHCレベルを上げるので、尿検査で偽陽性が出る可能性があるとも言われています。つまり、CBNはTHCの効果を引き上げる可能性があるという事です。
CBC/Cannabicromene(カンナビクロメン)
2019年の論文には、CBCは大麻植物に最も多く含まれる非精神活性のカンナビノイドであり、Δ9THCの作用を増強させる働きがあると示されています。そのほか、鎮痛、抗炎症作用などが期待されている成分です。
CBG/Cannabigerol(カンナビゲロール)
CBGは全てのカンナビノイドの母と呼ばれ、THCやCBDなど多くのカンナビノイドの前駆体で、大麻草の成長と共にTHCやCBDなどの成分に変化していきます。前駆体とは、”ある化学物質についてその物質が生成する前の段階の物質”のことで、CBGは主に若い大麻草に多い傾向にあります。そのため植物の成熟に反比例してCBGの含有量は低くなります。CBGには抗菌作用や炎症性腸疾患などへの治療効果が見込まれており、THCによる不安や妄想などの副作用を軽減する働きもあると考えられています。
CBL/Cannabicyclol(カンナビシクロール)
CBLは先に示したCBCの酸化物質であり、THCから成るCBNとその生成過程は全く同じです。CBLは非精神活性成分と言われていますが、ここで示したどのカンナビノイドよりも最も情報が少なく謎に包まれたカンナビノイドです。そのためCBLが持つ効果などについてはよくわかっていません。
THCV/Tetrahydrocannabivarin(テトラハイドロカンナビヴァリン)
THCVは食欲をおさえる効果があるとしてアメリカではダイエットウィードと呼ばれ人気を博しています。これは、THCVが持つCB1受容体への抑制効果からです。THCVの食欲抑制効果を説明する時によく引き合いに出されるのが、過去にヨーロッパで医薬品として販売されたリモナバンという肥満患者の血糖値コントロールと体重減少薬です。リモナバンも同じくCB1を抑制する作用があります。しかし服用した患者に、うつ病や自殺念慮などの重篤な精神的副作用が現れたため、販売から2年で市場から撤退したのです。THCVも同じくCB1受容体を抑制する効果があるのですが、このような重篤な副作用の心配が無いと考えられ、体重減少に寄与する可能性があると考えられるようになったのです。THCVはサティバ種に多く含まれることで有名で活力を与えたり、集中力を高める効果があると示されています。THCVもTHCによる精神作用をおさえる働きをすると考えられているようです。
このように、ここでは大麻に含まれる有名なカンナビノイドを並べてみることで、それぞれが潜在的に持つ効能や、その他のカンナビノイドに与える影響を確認しました。こういった、二つ以上の成分を同時に摂ることでお互い、またはどちらかの効果を高くしたり、低くしたりする効果を「アントラージュ効果」と言います。例えばTHCによる強い精神作用を抑えたい場合に一定量のCBDを加えたり、CBNとTHCの相乗作用を生かして睡眠に特化させたりと二つ以上の成分を同時に摂取することで、それぞれが持つ効果を高めあったり打ち消しあったりするという考え方です。この理論はある品種とある品種を交配する上で重要な概念ですが科学的に立証されてはいません。
アントラージュ効果に寄与するのはカンナビノイドだけではありません。大麻には主にカンナビノイド、フラボノイド、テルペンという大きく分けて3つの植物性化合物が含まれています。中でもカンナビノイドに次いで、テルペンという成分の役割が大きな影響を与えると考えられています。また、イディカ種、サティバ種それぞれに多く含まれる特徴的なテルペンなどもわかっており、効果にも影響を及ぼします。そこで次はテルペンの効果についてご説明します。
マリファナのテルペンとカンナビノイド
テルペンとは主に大麻のトリコームと呼ばれる花穂に多く含まれる成分で、品種の香りや風味に影響を与えるだけでなく、効能にも大きく影響を及ぼすと言われています。テルペンは大麻だけではなく、その他の植物にも多く含まれており、化粧品などの商品の香りづけ成分としても知られています。元々テルペンとは植物が繁殖、または外敵から身を守るためなど、生きるために必要な芳香成分で、リナロールというラベンダーに含まれるテルペンは安息効果があると同時に、ミツバチを惹きつけるという特徴も持っていますし、松の木が持つピネンは清涼感のある香りを放つと同時に害虫を寄せ付けない効果を持ちます。これらのことからもテルペンは多くの可能性を秘めていることがわかります。その可能性を、大麻に含まれる代表的な5つのテルペンを取り上げて詳しくご紹介していきます。
ミルセン
ミルセンはビールの原料ホップやマンゴー、グァバなどに含まれます。その香りは、ハーバルで樹脂や湿った土のようであると説明され、2022年の動物で行われた研究では睡眠や運動弛緩効果があると示されています。このミルセンを多く含む大麻株はスパイシーで甘い香りを放ちます。ミルセンを多く含む大麻株にはOG Kush/オージークッシュ(ハイブリッド)やBlue Dream/ブルードリーム(ハイブリッド)、Grand Daddy Purple/グランダディパープル(インディカ)などがあります。ミルセンは多くの大麻品種の約50%に含まれていると言われるほど含有割合が多いテルペンで、THCと組み合わせるとカウチロックと呼ばれる深い鎮静効果を及ぼす可能性があると考えられ、インディカ種に多いテルペンです。
α-ピネン
ピネンは松などの針葉樹や、ミント、ホーリーバジルなどの多くの芳香性食用植物に含まれている成分です。ピネンの香りは雨後の針葉樹林のような爽やかな松の木の香りを持つことで有名で、キッチンクリーナーなどにも含まれることがあります。気管支拡張作用などがあると言われており、ピネンを多く含む大麻株はCotton Candy Kush/コットンキャンディークッシュ(ハイブリッド)やGrape Ape/グレープエイプ(インディカ)、Harlequin/ハーレークィン(サティバ)などです。ピネンはCBDと同時に摂ることで抗炎症性を強めたり、THCによる短期記憶障害を打ち消す可能性があると考えられています。
リナロール
リナロールには安息効果があります。ラベンダーなどに多く含まれており、ラベンダーが入ったサッシェなどを枕元に置いて寝るとリラックスできて睡眠に良いと言われる根拠となる成分です。リナロールは甘いフローラルな香りがあると表現され、Do-si-dos/ド-シ-ドス(ハイブリッド)やKosher Kush/コーシャクッシュ(インディカ)などに多く含まれています。抗菌作用が見込まれているため、CBDと相互作用することで肌トラブルの改善などが期待されています。また、安息効果があることから、THCやCBNなどと組み合わせることで強いリラックス効果を生む可能性が示されています。
β-カリオフィレン
ベータカリオフィレンは黒胡椒や葉物野菜などに含まれていることで有名です。ピリッとしたスパイシーな香りが特徴的で、胃の細胞の保護作用があり、CB2という受容体に働きかけることがわかっています。CB2受容体は主に動物の免疫細胞や骨細胞、脾臓などに多く存在し、CB2へ働きかける成分は人の健康に良い影響を与えるとして積極的な研究対象となっています。「葉物野菜を食べると体に良い」と言われる所以となる成分がこのβ-カリオフィレンです。β-カリオフィレンはGorilla Glue #4/ゴリラグルーNo, 4(ハイブリッド)、Bubba Kush/バッバクッシュ(インディカ)やChemdawg/ケムドッグ(ハイブリッド)などに多く含まれています。古くから存在する有名な民間療法の一部で、THCのハイをおさえるために黒胡椒を噛むというものがあります。強い作用のある大麻を吸いすぎたり、大麻を吸うことに慣れていない方などがいきなり多くの量を吸いすぎてしまって、グリーンアウトと呼ばれる精神的、肉体的苦痛を感じた時に黒胡椒を噛むと、黒胡椒に含まれるβ-カリオフィレンの作用でハイのレベルが下がり、少し楽になると言われているためです。このことから、THCと同時に摂取するとTHCによる強い酩酊感をおさえる働きをすると考えられています。
リモネン
リモネンはその名の通り、レモンやオレンジなどのシトラス系フルーツに多く含まれています。その香りはレモンを絞ったような柑橘系の香りで、動物実験ではラットの抗ストレス効果を示したと言われています。また、活力を与えてエネルギーを高める効果があるとも考えられているため、サティバ種に多く含まれていますが、インディカ種にも含まれています。リモネンが優勢な大麻株はWedding Cake/ウェディングケーキ(ハイブリッド)、Quantum Kush/ クァンタムクッシュ(サティバ)、MAC/ ミラクルエイリアンクッキーズ(ハイブリッド)などです。また、リモネンには抗菌性があることもわかっているため、CBDなどに加えることで肌トラブルに対応できる可能性なども示唆されています。
今回ご紹介した以上のテルペンはほんの一部ですが、様々なテルペンが持つ効能があることからカンナビノイドと組み合わせることで様々な効果を発揮する可能性があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。ひいては、インディカ、サティバ、ハイブリッドという分類に分けられている各品種が持つ風味や特性にも影響を及ぼしているのがテルペンという植物性化合物の存在です。
ここまでのことを踏まえると、インディカとサティバという分類分けには様々な成分が影響を及ぼしていることがご理解いただけたことと思います。また、インディカ=重たい、サティバ=軽いというだけの表現では不十分であるということも同時に理解できたのではないでしょうか。ただし、サティバとインディカはその形が大きく違うことでも有名です。そこで次はサティバとインディカの形の違いについて詳しくご説明します。
サティバ・インディカなど形状の違い
大麻の種類は葉の形や植物の形や育つ環境などで、インディカ・サティバ・ルデラリスという3種類に分けられます。ハイブリッドはインディカ種とサティバ種を人為的に掛け合わせたものであるため、サティバ種が優勢であればサティバ寄りに、インディカ種が優勢であればインディカ寄りと、特徴は親株に依存するためここでは割愛します。
サティバ種
サティバ種の大きな特徴は背が高く、葉は薄く、ほっそりとして長いことです。よく見かけるマリファナのマークやロゴなどに使用される絵を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。葉の色は明るい緑色をしており、太陽の光が1年のうち長時間降り注ぐアフリカなどの熱帯気候を好みます。サティバ種はTHCの含有量が低いため、活力を与える効果があるので日中の社交的なシーンで使用されたり、クリエイティブな作業に向いていると言われています。
代表的なサティバ品種大麻はJack Herer(ジャックヘラー)、Durban Poison(ダーバンポイズン)、Green Crack(グリーンクラック)などが挙げられます。
インディカ種
インディカ種は3種類の中で最も葉が厚くて幅が広く、背丈も低く、ずんぐりとしていることが特徴的です。バッズと呼ばれる花穂がギュッと詰まっている形で、葉の色は深い緑色をしています。インディカ種はサティバ種よりも成長が早く、パキスタンやヒンドゥークッシュ山脈などの涼しい気候でよく育ちます。THCの含有量が高いインディカ種の効果的な特徴はいわゆる「ストーン」や「カウチロック」と呼ばれる深いリラクゼーションをもたらすことです。そのため日中よりは夜間の使用に適していると言われています。
代表的なインディカ品種大麻はGranddaddy Purple(グランドダディ・パープル)やNorthern Lights(ノーザンライツ)、Blueberry(ブルーベリー)などです。
ルデラリス種
ルデラリス種はかなり特徴的な葉の形をしています。中央の3つの葉はサティバ種のように比較的長く丸みを帯びており、左右に展開する葉は極端に小さいことが特徴です。背丈も3種の中で最も低くて幹が太くコンパクトです。ルデラリス種は東ヨーロッパやロシアなどが原産地で、サティバやインディカのように気候に影響されずに年齢に基づいて自然と開花するため、過酷な環境下でも収穫が出来る万能性から「元祖オートフラワー(自動開花植物)」と呼ばれます。このような過酷な環境でも自然に育ち、THCの含有量が少なかったため、以前は「雑草」と考えられていましたが栽培の容易さから人気が出て、様々なハイブリッドのルデラリス種が海外では販売さるようになりました。インディカが優勢な場合は「ルデラリス インディカ」、サティバが優勢であれば「ルデラリス サティバ」と呼ばれ、効果や形は親株に依存するため、これといった特徴を表すことはできません。ただし、THCとCBDの含有量が少ないことと、育てる手間がかからないこと、コンパクトな形であるという理由から穏やかな体験を求める方や自宅栽培の初心者などに好まれています。
このように「大麻」と一括りにしても形も効果も異なるものが存在しているのです。そして、至る所で交配が行われて新しいハイブリッド種が作られているため、サティバやインディカという区別にはほとんど意味がありません。また、サティバ種とインディカ種は時を経るにつれて交雑しているはずですから、現存するそれぞれの品種は純粋なサティバとインディカの祖先が持っていた化学組成が100%受け継がれているというよりは混合体であると考えるのが自然でしょう。つまりここまででわかることは、サティバ種とインディカ種とは、育つ気候と形が異なり、その影響によりそれぞれに含まれる成分量が異なるという事と、現在栽培され消費されているインディカとサティバは、過去に存在した純粋な種を受け継いでいるとは考えにくいという事です。大麻の種類について詳しくは「大麻の種類とは?形状、品種、その他薬物とマリファナの違いなどを徹底的に解説」を併せてご覧ください。
ここまででサティバとインディカの形や効果の違いについて段階を踏んでご説明してきました。次はいよいよ、インディカとサティバという分類分けがいまだに残っており、大麻ユーザーの間で使用されているのはなぜなのかという疑問に迫ってみたいと思います。
Indica種、Sativa種という区分け
実はインディカ・サティバという分類分けは昨今では大麻生産者や小売業者の間で慣習的に使われているだけなのです。とはいえ、これらのディスペンサリーが提示するインディカとサティバの効果は思った以上に消費者の予想通りであることも事実です。ただしこれは、インディカとサティバ両方を試したことがあるユーザーの経験則に基づいている事が多く、大麻に関する知識の無い初心者ユーザーなどは、サティバ種でもカウチロックを引き起こすものがあったり、インディカ種でもクリエイティブな思考になるものも存在するため、嗜好品としても消費者の目的を達成できない可能性があることも事実です。娯楽用であればこのような勘違いは特に問題とはなりませんが、医療目的で大麻を使用する人にとっては思った効果が得られず、症状が改善しないという結果につながりかねません。にもかかわらずインディカ・サティバという言葉が未だに残っているのはそれなりの理由があるはずです。そこでインディカ・サティバという言葉の起源を探ってみました。
かつて18世紀には様々な麻植物が存在しており、これら大きな二つの異なる種を表すためにインディカとサティバという言葉が使われていたと考えられています。先に記したように、背が高く、葉が細く暖かい環境を好むものをサティバ、背が低く、葉が広く、寒い気候を好むものをインディカと区別し、このインディカ・サティバという命名法についての疑問は以下のように世界中で議論されてきました。1753年、スイスの植物学者であるカール・リンネはその著書 「Species Plantarum(植物の種)」の中で精神活性作用のある植物をCannabis Sativaと特定しましたが、1785年にフランスの生物学者であるラマルクは西大陸で栽培されている種であるカンナビスサティバ以外にもインドなどに自生するインディカという種の大麻植物があると提唱したのです。その後1976年にカナダの科学者アーネスト・スモールとアメリカの植物学者アーサー・クロンキストは、大麻植物はカンナビスサティバ1種類であり、THCの含有量が高い変種をインディカ、THCの含有量が低い変種がサティバであると提唱し、現在に至るまで議論が続いています。
そして、インディカ・サティバという分類分けを超える新たな分類法はどのようにしたら良いのか?という疑問に対してアーネスト・スモールが近年提案した大麻の分類分けが以下の通りです。
- 西アジアとヨーロッパで茎繊維や油種子のために栽培されている非麻薬性植物のグループ。
(低THC・高CBD)
- 東アジア、主に中国で栽培されている非麻薬性植物のグループ。
(低〜中THC・高CBD)
- 南中央アジアで栽培されている麻薬性植物のグループ。
(高THC)
- 南アジア(アフガニスタンおよび近隣諸国)で栽培されている麻薬植物のグループ
(THC・CBD共に含まれている)
つまり、大麻植物は全てカンナビス・サティバ・Lから派生し、THCとCBDの含有量に応じて大麻植物をグループ分けしてみてはどうか?というものです。これは命名法に基づく植物学的な分類分けとして単にインディカ・サティバと分けるよりもより詳しいもので、ここから更に前進して、ケモタイプと呼ばれる以下の分類分けが提案されました。
タイプⅠ:THC優勢
タイプⅡ:THC:CBD=50:50
タイプⅢ:CBD優勢
タイプⅣ:CBG優勢
タイプⅤ:カンナビノイド無し
ケモタイプはカンナビノイドの含有量を考慮した分類分けで、インディカ・サティバという分け方よりもより詳しい効果を事前に推測することができます。しかしここで問題になるのは、含まれるカンナビノイドの量です。例えば、THC5%、CBD1%という品種はケモタイプのタイプ1にカテゴライズされますが、THC20%、CBD4%という品種も同じタイプ1にカテゴライズされるのです。前者よりも後者の方が圧倒的に強力に作用することは自明であるため、このカテゴリー分けでもまだ十分とは言えません。
また、同じ名前を持つストレインであっても、麻か大麻かによってその効能は異なりますし、ブランドによっても栽培方法や保管方法が異なるため、同じ品種でも全く違う感じ方をする事があります。実際、同じ品種名でサティバに属するものとインディカに属するものが存在します。メキシコ、アフガニスタン、タイの種子から生まれたと言われるAK47という品種は、1999年のハイタイムズ・カンナビスカップの「サティバ部門」で2位に入賞した4年後の2003には同大会の「インディカ部門」で2位になったという事実があります。つまり、名前のイメージだけで判断してしまうと軽い効果を求めてサティバ品種を購入したものの、実際は体を動かせなくなるほど重たいインディカ効果を持っていたというケースが発生する可能性があるという事です。
そこで最近では、大麻草が持つ特性を更に分かりやすく表記するケモバーと呼ばれる分類法が提唱されてきています。
大麻商品のケモバーとは
ケモバーとは、大麻が持つ植物性化学物質によって分類する方法で、その菌株に最も多く含まれるカンナビノイドの種類と含有量に加えて、最大4種類のテルペンの含有量も表示するというものです。この表記の仕方は消費者が大麻にどのような成分がどの程度含まれているかということが事前にわかるため、「試してみたけど予想していた効果ではなかった」という経験を少なくすることができると考えられています。
ミルセンには鎮静効果、カリオフィレンは抗炎症効果、リナロールは抗不安効果、ピネンには記憶力を高める効果などそれぞれのテルペンが持つ特性は異なります。そのため、品種に含まれるカンナビノイドの種類と含有量に加えて、含まれるテルペンの種類と含有量もわかると、その品種が持つ効果をより詳しく知る事ができるのです。これは医療大麻の提供者も品種の選択が容易になりますし、一般の消費者も一目瞭然で自分に合う大麻製品を見つけることが出来るでしょう。
判定は通常ラボで行われます。特定の大麻をラボに提出し、含まれるカンナビノイドの種類と含有量、同じくテルペンの種類と含有量を測定してその簡略化したデータをラベリングするのです。そのため、全ての大麻品種にこれらの表示がされているわけではありませんが、ブランドによっては取り入れ始めているところもあります。こうして、大麻界では事業者のみならずユーザーの間でもこのケモバーという分類分けに注目が集まっているのです。
インディカ・サティバの違いについての結論
インターネットで検索すると、「インディカとサティバの違いは主に効果が異なる」と説明する記事をアップしているサイトが多いという印象です。とても明快な分類で、尚且つ大麻に関心を寄せる初心者の方にとってこれらの言葉は非常に魅力的な響きを持っていますが、様々な効能を持つ数多くの大麻品種を大きく二つに分類し、「効果が異なる」と一言でまとめることは必ずしも十分ではありません。また、国内のベイプリキッドの販売業者の中にも、使用しているテルペンの品種に関連付けて、サティバ・インディカ・ハイブリッドというカテゴリーで商品の選択ができるようにサイト設計を行っている業者もありますが、これらの分け方は必ずしもその効果を担保するものではありませんので、あくまでも参考までに留めておいた方が良いでしょう。
インディカとサティバという純粋な種は長い年月の中で恐らく交配されてきており、現代市場に流通する大麻のほとんどがこの祖先が混ざり合った結果として存在しているはずです。つまり、インディカとサティバは大麻品種の形と育つ気候によって分類されて名付けられたが、それぞれに属する品種が持つ細かい効果までは表すことができず、俗語として今も残っている、かつ名付けには科学的根拠がない。と現段階では言えるでしょう。
まとめ
大麻の品種は「カンナビス・サティバ・L」として知られ、全ての大麻植物がこのサティバから派生していると考えられています。インディカとサティバという分類は植物の命名法から生じたもので、一般的には、サティバは軽く、インディカは重い効果を持つとされていますが、これは主にTHCの含有量に基づく認識です。
娯楽用大麻には700種類以上の品種があり、その名前は香りや血統に基づいていますが、名付けのルールは統一されていません。サティバはクリエイティブな作業や日中の使用に、インディカはリラックスや睡眠に適していますが、実際の効果は品種により異なるため、この分類は不十分であると言えるでしょう。
大麻は主にインディカ、サティバ、ルデラリスの3種類に分類され、これらの大麻植物に含まれるのがカンナビノイドです。カンナビノイドは100種類以上あり、大麻の主要成分であり、それぞれが異なる効果を持ちます。また、200種類以上あるテルペンという芳香成分も大麻の効能に影響を与えます。テルペンとカンナビノイド、またはカンナビノイド同士の相乗効果を「アントラージュ効果」と呼び、これが大麻の効果に大きな影響を与えます。
近年、サティバ、インディカの分類に代わる新たな分類法として、カンナビノイドとテルペンの含有量に基づくケモタイプやケモバーという方法が提案されています。このような新たな大麻の分類方法が広く知られるようになると、多くの人が大麻の効能をより正確に推測することが可能になるでしょう。
参考文献
- David Gloss | An Overview of Products and Bias in Research | Neurotherapeutics. 2015 Oct; 12(4): 731–734.
- Nunzia La Maida et al. | Recent challenges and trends in forensic analysis: Δ9-THC isomers pharmacology, toxicology and analysis | Journal of Pharmaceutical and Biomedical AnalysisVolume 220, 25 October 2022, 114987
- Michael Udoh et al. | Cannabichromene is a cannabinoid CB2 receptor agonist | British Journal of PharmacologyVolume 176, Issue 23 p. 4537-4547
- T Gurgel do Vale et al. | Central effects of citral, myrcene and limonene, constituents of essential oil chemotypes from Lippia alba (Mill.) n.e. Brown | Phytomedicine. 2002 Dec;9(8):709-14.
- Antonino Pollio | The Name of Cannabis: A Short Guide for Nonbotanists | Cannabis Cannabinoid Res. 2016; 1(1): 234–238.
コメント
この記事へのコメントはありません。
この記事へのトラックバックはありません。