HHCPの実態を探る:THCの30倍と言われるその効果は果たして本当か?
目次
はじめに
ヘキサヒドロカンナビフォロール(HHCPと略される)は、大麻植物に含まれるカンナビノイド関連化合物です。
HHCPに関する詳細な情報は限られていますが、大麻に含まれる主要な精神活性化合物であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)と構造的・機能的に類似していることから、様々な分野で注目を集めています。
国内市場にHHCPが持ち込まれたのは2022年頃ですが、2023年の現在も市場に流通し続ける比較的息の長い成分であると言えます。
様々な情報ではHHCPはTHCよりも遥かに強く、その効果は長いと言われていますが、果たしてそうなのでしょうか。HHCPについての逸話と実態のギャップを探ってみたいと思います。
HHCPの化学構造と合成の利点
HHCPとはHexahydrocannabiphorol ヘキサハイドロカンナビフォロールの略称で、日本では2022年3月に規制されたTHCPの水素化物質です。水素原子がTHCPに付加され、化学構造が変化するというプロセスは、HHCPの効力、安定性、効果に影響を与えます。
一般的に水素化というプロセスを経ることで物質としての安定性が増すため、水素化する前の物質と比較すると長期保存が可能になり、原料の消費期限は長くなると言われています。
考えられているHHCPの効力と効果
HHCPについての研究は現段階ではほぼ皆無であるため、水素化される以前の成分THCPからその効力と効果について探ってみましょう。
THCPは2019年にイタリアの研究チームによって発見されたことで有名で、この時、日本では違法となったTHCBも同時に発見されています。
THCPは私達人間が体内に持つ、CB1という受容体に対して強い親和性を示すと言われていることから、THCPはTHCの約30倍の効力を持つと示唆され、痛みの管理から高揚感を得たいと考えるヘビーストナーまで幅広い層の興味を集めてきました。
THCPがTHCの30倍強い効果を持つと考えられているのは、化学構造から推測することができます。THCPの化学構造はTHCによく似ていますが、異なるポイントは炭素鎖という炭素原子を含む鎖の数です。この鎖の数が長いほど、体内の受容体に結合しやすくなると考えられており、THCPは7つの炭素鎖、THCは5つの炭素鎖を持つためTHCPはTHCよりも遥かに高い効果を発揮すると考えられているのです。
これらのことから、水素化されたHHCPも同様に強力な作用があると示唆されていますが、精神作用の強さ、効果の持続時間、生理学的影響という点ではもしかすると違いがあるかもしれません。
HHCPの医療および治療の可能性
HHCPはTHCと類似していることから考えると、疼痛管理、抗炎症治療、鎮痛や不安の緩和、抗酸化作用、または精神疾患や神経疾患への応用なども期待されますが、現段階ではその効果や安全性に関しての研究はありません。
今後研究が進むにつれてHHCPが潜在的に持つ効果の医療用途への可能性が開けていくでしょう。
法的地位と安全性
HHCPの法的地位は世界的に見ると国や地域によります。多くの場合、大麻や関連化合物の法的地位と関連していますが、日本では2023年11月時点、合法的に摂取可能な成分です。
法的な面では安心して摂取出来る成分ですが、臨床研究が無いため、HHCPの安全性はまだ確立されていないと言えるでしょう。
今後のHHCPの方向性
ここまでのことからHHCPの薬理学的プロフィール、安全性、医療応用の可能性を理解するためには、今後の研究が極めて重要で、長期的な効果や、エンドカンナビノイド系との相互作用、他のカンナビノイドとの比較に関する研究などが必要であると考えられます。
また、法的地位に関しても、これまでに規制されてきたカンナビノイド同様に、いつ、国からの規制がかかるかわかりませんので、随時規制情報の確認が必要です。
消費者の使用と認識
HHCPが市場に出回るようになるにつれ、その効果、安全な使用法などについて、消費者同士、様々な議論が交わされています。
これらの議論を見ると、ここまでご説明してきた「HHCPはTHCの30倍強力である」という情報の裏付けが出来るものと、疑問符が付くものに分かれます。
いくつかの情報源では、「米粒より小さなHHCPを吸引しただけで長時間ピークが続いた。」という強力で長い効果が報告されているものや、「圧倒されるので勧めない」という報告がある反面、「HHCPはTHCPよりも軽い効果である」というものや、「THCPよりも圧倒的に軽く、単なるヘッドバズのみ」という報告も存在します。
この相反する報告に消費者は戸惑ってしまいますが、これらの情報には、どのような形態の(Vape、ティンクチャー、エディブルなど)商品で、どの程度のHHCPが含まれているかが統一されているわけではないことと、それらの製品の中にHHCP以外どのような物質が含まれているかがわからないため、比較することは困難です。
いずれにしても利用者は、HHCPに関する包括的な研究や情報が不足していることを認識し、慎重な姿勢で向き合う必要があると言えるでしょう。
結論
HHCP ヘキサヒドロカンナビフォロールは有望ではありますが、まだ十分に解明されていないカンナビノイド様化合物です。
その研究は初期段階にあり、その特性、潜在的な利益、リスクについてはまだ多くのことが解明されてはいませんが、国内では合法的に摂取できる成分です。
効果や効能はその製品に含まれるその他の物質などに左右される可能性があるため、HHCPを含む製品を購入する際は信頼できるメーカーから購入する事をお勧めします。
また、HHCPの派生物質としてこのような成分もあるようです。
参考:Cinzia Citti et al. | A novel phytocannabinoid isolated from Cannabis sativa L. with an in vivo cannabimimetic activity higher than Δ9-tetrahydrocannabinol: Δ9-Tetrahydrocannabiphorol | Sci Rep. 2019 Dec 30;9(1):20335.
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