10-OH-HHC:複雑な名前に隠された科学を探る
目次
はじめに
10-OH-HHCという物質が日本市場に現れたのは2023年中旬以降であると多くの方は認識しているかもしれませんが、製造国アメリカでは2023年3月頃から既に市場に流通していた成分です。
この特異な成分名は、2022年に規制のかかったHHCを冠していることに気づいた方もいるのではないでしょうか。そして、これまで国内で流通していたTHCO、THCP、HHCPなどのカンナビノイド名とも全く異なっています。
そのため、これまで、何か得体の知れない成分であると一部のユーザーからは嫌厭されていたようです。
そこでこの記事では、この新しい成分10-OH-HHCの世界を深く掘り下げ、その特徴や効果、潜在的な利点だけでなく、国内の法的地位についても探って行きます。
新成分10-OH-HHCとは
10-OH-HHCとはHHCの代謝物質です。
代謝とは、物質が生体内に取り込まれた後に行われる化学反応の総称で、カンナビノイドを生体内に取り込むと、主に肝臓に存在するシトクロムP450という酵素によって分解されその形を変えるのです。
つまり、10-OH-HHCはHHCを摂取した後に、肝臓によって構造が変化した物質であると表すことができます。
しかしこのHHCの代謝物質がどのように作用するのかについては疑問が残ります。そこで、その他の代謝物質を例にとって簡単にご説明します。
Δ9-THCとHHCの生体内代謝について
大麻に含まれる成分の中でも最も有名なΔ9-THCという物質は、人間の体に入ると、11-OH-THCという物質に代謝され、その後、THC-COOHという物質に代謝されて排出されていきます。これはHHCも同様で、生体内で代謝されると11-OH-HHCという物質とHHC-COOHという物質に代謝されるのです。
11-OH-THCも11-OH-HHCも、THC、HHCと同様の精神活性作用を持ちますが、その後の代謝物質であるTHC-COOHとHHC-COOHは精神作用を持ちません。
つまり、化学構造が変化した後でも、( )-OH-( )という形の物質は精神活性作用を引き続き持つことがわかります。
なお、これらの成分は摂取後糞便と尿に含まれて排出されるため、ドラッグテストで行われる尿検査ではこれらの成分の検出量によって陽性か陰性かが判断されます。
10-OH-HHCの形状と特徴
10-OH-HHC原料はアイソレートとディスティレートの形状の2種類存在し、ディスティレートは黄金色の粘性の高いオイル状で、アイソレートは真っ白いパウダー状です。
ディスティレートには微量のCBN、9α-OH-HHC、9β-OH-HHCが含まれ、アイソレートはその他の成分を全く含まない純粋な10-OH-HHCのみであるということがメーカーが発行している成分分析書(CoA)に記載されています。
そして、アイソレート、ディスティレート共にTHCは全て除去され、ND/非検出という形で出荷されています。
10-OH-HHCの違法性は
2023年12月時点では10-OH-HHCに違法性はありません。
既に規制の対象となっているHHCには、9Rと9Sというアイソマー(異性体)が存在します。9Rアイソマー が主に物質の精神活性作用を担っているため、9Rの含有量が多いHHCの方が強く精神作用が出ることがわかっています。
先ほどご紹介したアイソレートに関してはその他の成分は含まれていないため特に問題とはならなりません。ディスティレートに含まれる物質はCBNの他に9β、9α-OH-HHCという物質ですが、規制薬物である9RHHC、9SHHC、どちらの化学構造とも、OHというヒドロキシ基が含まれる物質の化学構造は異なるため、違法性はありません。
実際、日本にも10-OH-HHCのアイソレート、ディスティレートが輸入されてきているという事実からも違法性が無いということはご理解いただけることと思います。
10-OH-HHCの効果とは
製造ラボの情報では、10-OH-HHCの効果の立ち上がりは非常になめらかかつスムーズで、その体感は吸引後数秒〜数分で緩やかに現れ、ピークはΔ8-THCや、9R異性体を多く含むHHCに似ていると言われています。また、また、その他のカンナビノイドと併用するとその効果を増強する働きがあるとも報告されています。
ユーザー報告では、近頃市場に流通する精神作用が強い、体内のシステムに長きに渡って残る精神活性カンナビノイドとは異なり、10-OH-HHCはマイルドな体感が特徴的で、その持続時間も比較的短くライトなもので、HHCよりも少し弱い程度のハイを経験すると言われています。
つまり、10-OH-HHCはTHCをそこまで多く含まない全草に近い体験が出来る可能性があります。
10-OH-HHCの危険性や副作用は
10-OH-HHCに関する危険性や副作用に関してはまだ報告されていません。もちろん臨床研究なども皆無であることから、正しい副作用に関しての情報はありません。
ただし、これまでに輸入されてきたTHCの〜倍というような強烈な効果でも、次の日にまで怠さが残るという長い持続時間を持つものではないと報告されていることと、プロドラッグのように代謝されるまでその効果が現れないというものでもなく、吸引摂取後短い時間でその効果を感じることが出来るため、過剰摂取の危険性に関しては比較的低い可能性があります。
ただし、長期使用や、高用量で摂取をしてしまうと何らかの健康被害をともなう可能性も無いとは言い切れませんので、節度を持った摂取を心がけてください。
結論
2023年に入り、新たに生成された物質である10-OH-HHCは、そのマイルドなハイと、長く続かないライトな効果、秀逸なアントラージュ効果で、市場の注目を集めています。
目新しい名前に少し戸惑ったユーザーも、これまで強い効果を持つリキッドを楽しんできたユーザーも、カンナビノイドの嗜み方を再定義するであろう10-OH-HHCという魅力的な成分、一度は試す価値があるのでは無いでしょうか。
参考文献
CANNATURA
Christian Falck Jørgensen et al. | Evidence of 11-Hydroxy-hexahydrocannabinol and 11-Nor-9-carboxy-hexahydrocannabinol as Novel Human Metabolites of Δ9-Tetrahydrocannabinol | Metabolites 2023, 13(12), 1169
Willi Schirmer et al. | Identification of human hexahydrocannabinol metabolites in urine | Eur J Mass Spectrom (Chichester). 2023 Oct;29(5-6):326-337.
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